ゴルフ肘 ストレッチ|前腕屈筋の3つの手技と秒数・練習前後の使い分け
ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)は、手首を手のひら側に曲げる・前腕を内側にひねる動作を担う前腕屈筋群——円回内筋・橈側手根屈筋(FCR)・尺側手根屈筋(FCU)——の骨付着部(肘の内側の出っ張り=上腕骨内側上顆)に負荷が蓄積する使い過ぎ障害です。自分でできることは、①前腕屈筋群のストレッチ(練習前は動的に軽く、練習後は静的に長く)、②痛みが落ち着いてきた段階でのリバースタイラーツイストの3手技。いずれも「痛みの出ない範囲」が大原則です。小指・薬指のしびれを伴う場合は無理せず下記の目安を確認してください。
⚠️ 整形外科・整骨院への受診を検討する目安
① 安静にしていても痛む・夜間痛で目が覚める
② 薬指・小指にしびれ、力が入りにくい感覚がある(尺骨神経症状の可能性)
③ 肘の内側が腫れて熱をもっている
④ セルフケアを2〜3週間続けても改善しない、または悪化している
上記に当てはまる場合は、自己判断で強い負荷をかけず、早めに評価を受けてください。
ゴルフ肘は「ゴルフをしている人」だけの悩みではありません。重い鍋やフライパンを持ち上げる、雑巾やタオルを固く絞る、子どもの抱っこ、キーボード入力といった家事・育児・デスクワークの動作でも起こります。まずは正しいストレッチと、練習の前後で何を変えるべきかを知ることから始めましょう。
ゴルフ肘とは?前腕屈筋群のどこが痛むのか
ゴルフ肘(正式名称:上腕骨内側上顆炎)は、手首を手のひら側に曲げる・前腕を内側にひねる動作を担う前腕屈筋群、なかでも円回内筋(Pronator Teres)・橈側手根屈筋(FCR)・尺側手根屈筋(FCU)の共同起始部(肘の内側の骨の出っ張り=上腕骨内側上顆)に繰り返し負荷がかかり、腱に微細な損傷が生じた状態です。
ゴルフのスイングで手首を返す動作で生じることから「ゴルフ肘」と呼ばれますが、実際には重い鍋を持ち上げる・タオルを固く絞る・子どもを抱っこする・長時間のキーボード操作など、手首を手のひら側に曲げて力を入れる動作の繰り返しで誰にでも起こります。一般成人(30〜64歳)対象の疫学調査では、ゴルフ肘の有病率は0.4%(テニス肘は1.3%)で45〜54歳に多く、喫煙・肥満・腕の反復動作・力を込める作業がそれぞれ独立して発症に関連すると報告されています(Shiri R et al., American Journal of Epidemiology 2006, PMID 16968862)。
【手技1】前腕屈筋群ストレッチ
まず取り入れたいのが、痛みの出ない範囲で前腕屈筋群をゆっくり伸ばすストレッチです。動かし方は同じでも、練習前は軽く動的に、練習後や症状がある時は静的に長く——という使い分けが後述のポイントになります。
肘を伸ばした状態で腕を前に伸ばし、手のひらを上に向けます。反対の手で手のひら側から指先をつかみ、手首をゆっくり手の甲側(背屈)に反らしていきます。前腕の内側から肘の内側にかけてつっぱりを感じるところで止めてください。反動をつけず、痛みが強く出る手前で止めるのがポイントです。
【手技2】リバースタイラーツイスト(痛みが落ち着いてきたら)
安静時の強い痛みが落ち着いてきた段階で取り入れたいのが、「リバースタイラーツイスト」と呼ばれるエキセントリック運動(伸ばされながら力を入れる運動)です。テニス肘で使われる「タイラーツイスト」の手首の向きを逆にしたもので、ストレッチのように筋肉を伸ばすだけでなく、屈筋腱に適度な負荷をかけながら戻す動きが特徴です。
肘掛けなどに前腕を乗せ、手首を手のひら側に曲げた状態からスタートします。反対の手(または軽いチューブ・軽い重り)で軽く抵抗をかけながら、3〜4秒かけてゆっくり手首を手の甲側に戻します。「戻す動作」に時間をかけるのがポイントです。
他の治療で改善しなかった慢性のゴルフ肘患者20名を対象にした調査で、通常の理学療法にこの運動を追加したところ改善がみられたと報告されています(PMID 24944855)。ただし対照群のない小規模な症例集積であり、テニス肘のエキセントリック運動ほどの大規模な検証は行われていません。急性期はいきなり始めず、症状が落ち着いてから段階的に取り入れてください。
【手技3】円回内筋のセルフ軽擦
最後は、患部まわりの緊張をやわらげるセルフ軽擦です。「強く押す」のではなく「軽くさする」ことがポイントで、体が温まっているお風呂上がりや就寝前に向いています。内側上顆のすぐ後方には尺骨神経が通っているため、骨の出っ張りそのものを強く押さないよう注意してください。
反対の手の指の腹を使い、肘の内側の骨の出っ張り(内側上顆)から前腕の内側にかけて、皮膚の上から軽く圧をかけながら小さく縦・横方向にさすります。「痛気持ちいい」と感じる程度の圧にとどめ、骨の出っ張りそのものを強く押し込んだり叩いたりしないでください。
3つの手技の一覧表
3つの手技は、それぞれ向いている時期・場面が異なります。下の表で使い分けを確認してください。
| 技名 | 対象筋肉 | 時間・動作 | 回数 | 頻度 | 向いている時期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 前腕屈筋群 静的ストレッチ | 円回内筋・橈側手根屈筋・尺側手根屈筋 | 保持20〜30秒 | 2〜3セット | 1日3〜5回 | 練習後・症状がある時 |
| リバースタイラーツイスト | 橈側手根屈筋・尺側手根屈筋 | 戻し動作3〜4秒 | 10〜15回×3セット | 1日1回 | 安静時痛が落ち着いてから |
| 円回内筋セルフ軽擦 | 円回内筋・前腕屈筋起始部 | 10〜20秒 | 2〜3か所 | 1日1〜2回 | いつでも(強い圧はNG) |
練習前後の使い分け——動的か静的か
ゴルフ肘のストレッチで意外と見落とされがちなのが、「練習前」と「練習後」で伸ばし方を変えるという視点です。同じ前腕屈筋群を対象にしていても、目的が違うため方法も変わります。
| タイミング | 種類 | 時間・強さ | 目的 |
|---|---|---|---|
| 練習前 | 動的ストレッチ(ウォームアップ) | 手首を軽くリズミカルに動かす。伸ばしきらない。10回×2セット目安 | 血流を上げて筋肉の動きを引き出す |
| 練習後 | 静的ストレッチ(クールダウン) | じっくり伸ばして保持20〜30秒×2〜3セット | 使った筋肉の緊張をゆるめ、翌日への疲労を持ち越しにくくする |
スポーツ医学の分野では、運動直前の長時間の静的ストレッチが瞬発的な動きのパフォーマンスに影響し得ると指摘されています。そのため練習前は「伸ばしきって長く止める」静的ストレッチを避け、動的ストレッチにとどめるのが基本です。反対に練習後はじっくり伸ばす静的ストレッチが緊張をゆるめる目的に向いています。リバースタイラーツイストは、練習のない日にまとめて行うと負担が少なくなります。
やってはいけない動き
ゴルフ肘は「頑張って動かす」「強く揉んでほぐす」という対処が、かえって腱や神経への負担を増やして悪化させやすいケガです。次の動きは避けてください。
- 内側上顆そのものを強く押し込む・叩く:すぐそばを通る尺骨神経を刺激し、薬指・小指のしびれを誘発することがあります。セルフケアは「軽くさする」程度に。
- 痛みを我慢して原因動作を続ける:重い鍋を持ち上げる、タオルを固く絞る、抱っこを繰り返すなど原因動作を続けると腱への負荷が蓄積し慢性化しやすくなります。
- 練習前に長時間の静的ストレッチをして、そのまま強く振る:伸ばしきった直後に強い負荷をかけると筋肉が力を発揮しにくい状態のまま使うことになります。
- 急性期にいきなりエキセントリック運動を始める:安静時痛が強い時期は負荷をかける運動を避け、まずは静的ストレッチのみにとどめてください。
- 急に反動をつけて強く手首を反らす:勢いをつけた力任せの手首反らしは、すでに微細損傷を起こしている腱にさらなる負荷をかけます。
⚠️ 中止基準:ストレッチやリバースタイラーツイストの実施中・翌日に鋭い痛み・薬指や小指のしびれ・腫れの増強がある場合は、必ずその手技を中止し、受診を検討してください。
当院にゴルフ肘で来られる方は、ゴルフのスイング動作だけでなく、重い鍋を持ち上げる、雑巾やタオルを固く絞る、子どもの抱っこや荷物の持ち上げ、パソコン作業で手首を曲げた姿勢が続く場面で痛みに気づいたと話される方が目立ちます。ゴルフを長年やっていない、あるいは一度もやったことがないという方も少なくありません。
当院でできること
セルフケアで改善しない場合や、受診の目安に当てはまる場合は専門家による評価をおすすめします。当院では柔道整復師が前腕屈筋群のストレステスト・圧痛所見を評価し、肘部管症候群(尺骨神経の障害)との見分けのための神経症状の確認もあわせて行います。その上でハイボルト電気治療・テーピングによる負荷軽減、サポーターの使い方をご案内します。前腕の筋緊張が強い場合は、在籍する国家資格をもつ鍼灸師(はり師・きゅう師)による鍼灸で緊張緩和にアプローチすることもできます。
よくある質問(FAQ)
ゴルフ肘の詳しい原因・改善方法は専門ページで
前腕屈筋群ストレッチで痛みが引かない、肘部管症候群との違いも含めて原因からきちんと知りたいという方には、ゴルフ肘の専門コラムもあわせてご覧ください。当院での評価・施術の流れも紹介しています。
ゴルフ肘、セルフケアで改善しない時はご相談ください
「ストレッチを続けているのに痛みが引かない」「小指にしびれが出てきた」——そんな方もまずご相談ください。福岡市城南区・南区・早良区から多数ご来院。月火木金土日祝 9:00〜12:30 / 15:00〜20:00(水曜定休)。
福岡市城南区樋井川2-1-62 マークス城南1F|西鉄バス「長尾公園前」徒歩1分|駐車場4台
- Shiri R, Viikari-Juntura E, Varonen H, Heliövaara M. "Prevalence and determinants of lateral and medial epicondylitis: a population study." American Journal of Epidemiology, 2006; 164(11): 1065–1074. PMID: 16968862
- Tyler TF, Nicholas SJ, Schmitt BM, Mullaney M, Hogan DE. "Clinical outcomes of the addition of eccentrics for rehabilitation of previously failed treatments of golfers elbow." International Journal of Sports Physical Therapy, 2014; 9(3): 365–370. PMID: 24944855
監修:院長 河野太朗(柔道整復師)/鍼灸施術:在籍の鍼灸師(はり師・きゅう師)が担当
最終更新日:2026年8月13日