ゴルフ肘 ストレッチ|前腕屈筋の3つの手技と秒数・練習前後の使い分け
ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)のセルフケアは、前腕屈筋群を対象にした静的ストレッチ(保持20〜30秒×2〜3セット・1日3〜5回)を中心とする3つの手技が基本です。肘の内側の骨の出っ張りに負荷が集中する使い過ぎ障害で、原因動作を続けたままだとストレッチだけでは改善しにくい傾向があります。
負荷が集中するのは円回内筋・橈側手根屈筋(FCR)・尺側手根屈筋(FCU)が合流する骨付着部(上腕骨内側上顆)です。取り入れたい手技は、①前腕屈筋群のストレッチ(練習前は軽い動的ストレッチ、練習後は長めの静的ストレッチ)、②安静時痛が落ち着いてから行うリバースタイラーツイスト、③セルフ軽擦の3つ。どれも痛みの出ない範囲で行うのが前提で、薬指・小指にしびれが出た場合はいったん中止し、下記の目安を確認してください。
⚠️ 整形外科・整骨院への受診を検討する目安
① 安静にしていても痛む・夜間痛で目が覚める
② 薬指・小指にしびれ、力が入りにくい感覚がある(尺骨神経症状の可能性)
③ 肘の内側が腫れて熱をもっている
④ セルフケアを2〜3週間続けても改善しない、または悪化している
上記に当てはまる場合は、自己判断で強い負荷をかけず、早めに評価を受けてください。
クラブを握らない日でも、肘の内側の痛みは起こります。重い鍋を持ち上げる、雑巾やタオルを固く絞る、子どもを抱っこする、キーボードを長時間打つ——こうした前腕屈筋群を使う動作の積み重ねが引き金です。練習前後でストレッチの種類をどう切り替えるかから確認していきましょう。
ゴルフ肘とは何ですか?前腕屈筋群のどこが痛むのですか?
ゴルフ肘(正式名称:上腕骨内側上顆炎)は、手首を手のひら側に曲げる・前腕を内側にひねる動作を担う前腕屈筋群、なかでも円回内筋(Pronator Teres)・橈側手根屈筋(FCR)・尺側手根屈筋(FCU)が合流する共同起始部(肘の内側の骨の出っ張り=上腕骨内側上顆)に、繰り返しの牽引ストレスが蓄積して腱に細かな損傷が起きた状態を指します。
ゴルフのスイングで手首を返す動作がきっかけになることから「ゴルフ肘」と呼ばれていますが、実際には重い鍋を持ち上げる・タオルを固く絞る・子どもを抱っこする・長時間のキーボード操作のように、手首を手のひら側に曲げて力を込める場面であればゴルフ経験の有無を問わず生じます。一般成人(30〜64歳)を対象にした疫学調査によると、ゴルフ肘(内側上顆炎)の有病率は0.4%(外側上顆炎は1.3%)で45〜54歳の年代に多く、喫煙・肥満・腕の反復動作・力を込める作業がそれぞれ独立したリスク要因として挙げられています(Shiri R et al., American Journal of Epidemiology 2006, PMID 16968862)。
| 研究名 | 対象人数 | 結果(限界含む) |
|---|---|---|
| Shiri Rらの疫学調査(American Journal of Epidemiology 2006, PMID 16968862) | 一般成人(30〜64歳)対象(人数は本文に記載なし) | ゴルフ肘の有病率は0.4%(テニス肘は1.3%)で45〜54歳に多い。喫煙・肥満・腕の反復動作・力を込める作業がそれぞれ独立して発症に関連。 |
| Tyler TFらの調査(International Journal of Sports Physical Therapy 2014, PMID 24944855) | 他の治療で改善しなかった慢性のゴルフ肘患者20名 | 通常の理学療法にリバースタイラーツイストを追加したところ改善がみられたと報告。限界:対照群のない小規模な症例集積で、テニス肘のエキセントリック運動ほどの大規模な検証は行われていない。 |
手技1|前腕屈筋群ストレッチのやり方は?
最初の手技は、前腕屈筋群を痛みの出ない範囲でじっくり伸ばすストレッチです。伸ばす部位は同じでも、練習前は短く軽やかに、練習後や症状が出ている時期は長めにキープする——このメリハリが後述のポイントです。
肘をまっすぐ伸ばして腕を前方に出し、手のひらを天井に向けます。反対の手で手のひら側から指先を包み込み、手首をゆっくり甲側(背屈方向)へ倒していきます。前腕の内側〜肘の内側に張りを感じた位置で動きを止め、反動を使わず痛みの一歩手前でキープするのがコツです。
手技2|リバースタイラーツイストを痛みが落ち着いてから行うのはなぜですか?
じっとしていても痛む安静時痛が和らいできたら試したいのが「リバースタイラーツイスト」です。伸びながら力を発揮する運動=エキセントリック運動の一種で、外側上顆炎(テニス肘)で行う「タイラーツイスト」を手首の向きだけ逆にした手技です。屈筋腱に軽い張力をかけながら元の位置へ戻していく点がポイントになります。
肘掛けや机の端に前腕をのせ、手首を手のひら側へ曲げ切った姿勢から始めます。反対の手やセラバンド・軽めのダンベルで軽く抵抗をかけながら、手首を甲側へゆっくり持ち上げていきます。持ち上げる局面に3〜4秒かけ、急がずコントロールするのがコツです。
他の治療で改善しなかった慢性のゴルフ肘患者20名を対象にした調査で、通常の理学療法にこの運動を追加したところ改善がみられたと報告されています(PMID 24944855)。ただし対照群のない小規模な症例集積であり、テニス肘のエキセントリック運動ほどの大規模な検証は行われていません。急性期はいきなり始めず、症状が落ち着いてから段階的に取り入れてください。
手技3|円回内筋のセルフ軽擦のやり方は?
3つ目は、内側上顆に集まった張りを落ち着かせるセルフ軽擦です。強くもみほぐすのではなく皮膚の表面を軽くなでる感覚が基本で、湯船で体が温まった後や就寝前のリラックスタイムに取り入れやすい手技です。内側上顆のすぐ裏側には尺骨神経が走っているため、骨の出っ張り自体をぐいぐい押し込むのは避けてください。
利き手と反対側の指の腹を使い、肘の内側の骨の出っ張り(内側上顆)から前腕内側の筋腹にかけて、皮膚をなぞるように小さな円を描きながら圧を加えます。「気持ちよく感じる」くらいの弱い力加減にとどめ、骨の出っ張り部分を指先で押し込む・叩くようなことはしないでください。
ゴルフ肘ストレッチ3つの手技は、早見表でどう使い分けますか?
3つの手技には、それぞれ向いているタイミングや場面があります。判断に迷う時はこの一覧を目安にしてください。
| 技名 | 対象筋肉 | 時間・動作 | 回数 | 頻度 | 向いている時期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 前腕屈筋群 静的ストレッチ | 円回内筋・橈側手根屈筋・尺側手根屈筋 | 保持20〜30秒 | 2〜3セット | 1日3〜5回 | 練習後・症状がある時 |
| リバースタイラーツイスト | 橈側手根屈筋・尺側手根屈筋 | 戻し局面3〜4秒 | 10〜15回×3セット | 1日1回 | 安静時の強い痛みが引いてから |
| 円回内筋セルフ軽擦 | 円回内筋・前腕屈筋起始部 | 10〜20秒 | 2〜3か所 | 1日1〜2回 | いつでも可(強い圧は禁物) |
ゴルフ肘ストレッチは練習前後で動的・静的をどう使い分けますか?
ゴルフ肘のストレッチで意外と見落とされがちなのが、「練習前」と「練習後」で伸ばし方を変えるという視点です。同じ前腕屈筋群を対象にしていても、目的が違うため方法も変わります。
| タイミング | 種類 | 時間・強さ | 目的 |
|---|---|---|---|
| 練習前 | 動的ストレッチ(ウォームアップ) | 手首を軽くリズミカルに動かす。伸ばしきらない。10回×2セット目安 | 血流を上げて筋肉の動きを引き出す |
| 練習後 | 静的ストレッチ(クールダウン) | じっくり伸ばして保持20〜30秒×2〜3セット | 使った筋肉の緊張をゆるめ、翌日への疲労を持ち越しにくくする |
スポーツ医学の分野では、運動直前の長時間の静的ストレッチが瞬発的な動きのパフォーマンスに影響し得ると指摘されています。そのため練習前は「伸ばしきって長く止める」静的ストレッチを避け、動的ストレッチにとどめるのが基本です。
反対に練習後はじっくり伸ばす静的ストレッチが緊張をゆるめる目的に向いています。リバースタイラーツイストは、練習のない日にまとめて行うと負担が少なくなります。
ゴルフ肘のセルフケアで避けたいNG動作とは?
ゴルフ肘では「気合を入れて動かす」「痛いところをぐいぐい揉む」といった対応が、むしろ腱や尺骨神経への刺激を強めてしまうことがあります。以下の動作には注意してください。
- 内側上顆を指先で押し込む・叩く:すぐ裏を尺骨神経が走っているため、薬指・小指のしびれを誘発するきっかけになりやすい動作です。あくまで表面をなでる程度にとどめておきましょう。
- 痛みをこらえて原因動作をやめない:重い鍋を持ち上げる、タオルを固く絞る、抱っこを繰り返すといった動作を我慢して続けると、屈筋腱にかかる負荷が積もり積もって長期化しやすくなります。
- 練習前に長く伸ばしてから、そのまま強くスイングする:伸ばしきった直後の筋肉は瞬発的な力を出しにくく、かえって負担がかかりやすい状態です。
- 安静時痛が強いうちからエキセントリック運動を始める:休んでいても痛む段階でリバースタイラーツイストのような負荷運動に手を出すのは避け、しばらくは静的ストレッチだけで経過を見てください。
- 勢い任せに手首を大きく反らす:反動をつけた強い伸ばし方は、微細損傷を起こしている屈筋腱にさらなるダメージを与えます。
⚠️ 手技を中止する目安:ストレッチやリバースタイラーツイストを行っている最中・翌日に鋭い痛み、薬指や小指のしびれ、患部の腫れの増強が出た場合は、すぐにその手技をやめて受診を検討してください。
当院にゴルフ肘で来院される方は、実際のスイング動作よりも、重い鍋を持ち上げる、雑巾やタオルを固く絞る、子どもの抱っこや荷物運び、キーボード操作で手首を曲げた姿勢を保つ場面で痛みに気づいたという声が目立ちます。ゴルフのブランクが長い、あるいは一度もクラブを握ったことがない方も珍しくありません。
ゴルフ肘のストレッチで改善しない時、当院でできることは?
セルフストレッチを重ねても改善が乏しい、あるいは受診の目安に当てはまるという方には、当院での評価をおすすめしています。柔道整復師が前腕屈筋群の可動域・圧痛所見をみながら、症状の似ている肘部管症候群(尺骨神経の障害)が隠れていないか神経症状のチェックも行います。
評価をもとに、ハイボルト電気施術やテーピングによる負荷分散、サポーターの選び方をご提案します。前腕の張りがなかなか抜けない場合には、在籍している国家資格保持の鍼灸師(はり師・きゅう師)が鍼灸で緊張をゆるめるサポートも行っています。
よくある質問(FAQ)
反対に練習後は、痛みが出ない範囲でじっくり伸ばす静的ストレッチを長めの秒数で行い、クールダウンとして筋肉の緊張を解いていきます。安静時痛が落ち着いた段階でのエキセントリック運動(リバースタイラーツイスト)は、練習のない日にまとめて取り入れると負担が少なくなります。
ゴルフ肘の原因・改善方法をもっと知りたい方へ
屈筋群のストレッチを続けても内側の痛みが引かない、肘部管症候群との違いを含めて原因をしっかり理解したい方は、こちらのゴルフ肘専門コラムが役立ちます。当院での検査の流れや施術内容も紹介しています。
内側の痛みが引かないゴルフ肘、お気軽にご相談ください
「屈筋群のストレッチを続けても内側の痛みが引かない」「小指のしびれが気になる」という方は、無理を重ねる前にご連絡ください。福岡市城南区・南区・早良区から多数ご来院。月火木金土日祝 9:00〜12:30 / 15:00〜20:00(水曜定休)。
福岡市城南区樋井川2-1-62 マークス城南1F|西鉄バス「長尾公園前」徒歩1分|駐車場4台
- Shiri R, Viikari-Juntura E, Varonen H, Heliövaara M. "Prevalence and determinants of lateral and medial epicondylitis: a population study." American Journal of Epidemiology, 2006; 164(11): 1065–1074. PMID: 16968862
- Tyler TF, Nicholas SJ, Schmitt BM, Mullaney M, Hogan DE. "Clinical outcomes of the addition of eccentrics for rehabilitation of previously failed treatments of golfers elbow." International Journal of Sports Physical Therapy, 2014; 9(3): 365–370. PMID: 24944855
監修:院長 河野太朗(柔道整復師)/鍼灸施術:在籍の鍼灸師(はり師・きゅう師)が担当
最終更新日:2026年9月7日