股関節 ツボ|付け根の痛みに使う5つの経穴と押し方・NG場面
【結論】股関節・脚の付け根の痛みに用いられてきた経穴は、お尻の奥(環跳)・付け根の外側(居髎)・付け根の前面(衝門)・太もも内側(血海)・すね(足三里)の5つを、痛みが出る場面ごとに使い分けます。【自分でできること】お尻の奥と付け根の外側(環跳・居髎)は指の腹で5秒押す→5秒保つ→5秒戻すを1か所5回・1日1〜2回。付け根の前面の衝門は脈のすぐそばなので特に軽い力で3秒×3回・1日1回まで。【受診の目安】じっとしていても夜に強く痛む・発熱を伴う股関節の痛みがある・転倒後に立てない/体重をかけられない・可動域の制限がだんだん進んでいる場合は、ツボ押しより先に整形外科へ。
・安静にしていても、特に夜間に強く痛む(じっとしていても股関節がズキズキする)
・発熱を伴う股関節の痛み(化膿性股関節炎など感染症の可能性があります)
・転倒したあと、立てない・体重をかけられない(高齢の方は大腿骨近位部骨折の可能性があります)
・股関節の動く範囲がだんだん狭くなっている(靴下が履きにくい・脚が開きにくいなどが進行している)
これらはツボ押しで様子をみてよい状態ではありません。整形外科を受診し、必要な検査を受けてください。
当院は、柔道整復師(国家資格)の院長・河野太朗と、在籍する国家資格をもつ鍼灸師(はり師・きゅう師)が連携して股関節の痛みに対応しています。立ち上がる瞬間に付け根が痛む・靴下を履くときに突っかかる・長く座ったあと最初の一歩がつらい——そうしたお声を多くいただくため、このページはご自身で押せる範囲に絞ってまとめました。
股関節のツボはどう押す?——強さ・秒数・回数の基本
股関節まわりの経穴は、お尻の奥の筋肉・骨盤まわりの筋肉の上と、動脈のすぐそばを通る付け根の前面とで押し方の強さを大きく分けます。お尻の奥(環跳)・付け根の外側(居髎)は「痛気持ちいい」と感じるところまで指の腹で垂直に押しますが、付け根の前面(衝門)は脈のすぐ外側にあるため、触れる程度の軽い力にとどめます。爪を立てない、息を止めない、股関節をひねりながら押さない——この3つを守ってください。
押す時間帯は入浴後、股関節まわりが温まっているときが向きます。股関節が熱をもっているとき・発熱時・飲酒後は避けてください。
場面別・5つの経穴と押し方の実数
「今どんな動作で痛みが出るか」で使いやすい経穴が変わります。位置はWHO標準経穴部位(2008)に沿っています。
① 長く座ったあと立ち上がる前に/環跳(かんちょう・GB30)
位置:横向きに寝て、上側の脚の股関節とひざを軽く曲げます。太もも付け根の外側で一番出っ張っている骨(大転子)と、お尻の割れ目の上端にある仙骨のくぼみ(仙骨裂孔)を結ぶ線をイメージし、その線を3等分して大転子側から3分の1のところ、お尻の厚い筋肉(大殿筋)の中央にあるくぼみです。
やり方:横向きに寝るか、椅子に浅く座って親指の腹(または指を重ねて)ゆっくり垂直に押します。奥の筋肉なので表面をなでるのではなく、少し体重をかけるように圧をかけます。押した瞬間に脚へ向かって電気が走るような感覚が出たら、すぐに力を弱めてください(坐骨神経の近くを通るため)。
実数:5秒かけて押す→5秒保つ→5秒かけて戻す ×5回/1日1〜2回(長く座ったあと立ち上がる前に)。
② 歩き出す前に・靴下を履くときに/居髎(きょりょう・GB29)
位置:骨盤の前で一番突き出ている骨(上前腸骨棘)と、太もも付け根外側の大転子の一番出っ張った部分を結んだ線のちょうど真ん中にあるくぼみです。
やり方:立った姿勢で骨盤の出っ張りと大転子を指でたどって中点を探し、親指の腹で垂直に押します。
実数:5秒→5秒→5秒 ×5回(左右)/1日1〜2回(歩き出す前・靴下を履く前に)。
③ 脚を組む・車の乗り降りをする前に/衝門(しょうもん・SP12)
位置:脚の付け根の前面、水平に走るしわ(鼠径溝)のほぼ中央で、指を当てると脈を感じる場所(大腿動脈の拍動部)のすぐ外側です。恥骨の上のふちから外側に指幅5本ほどの位置が目安です。
やり方:座って股関節を軽く開き、鼠径部に指を当てて脈を感じる位置を確認したら、そこから指1本分ほど外側にずらして人差し指の腹で軽く押します。脈を感じる場所そのものは押さないでください。
実数:3秒かけて押す→3秒保つ→3秒かけて離す ×3回(左右)/1日1回。他の4つより弱い力にとどめます。
④ 入浴後、付け根から太ももの冷え・だるさに/血海(けっかい・SP10)
位置:膝を軽く曲げた状態で、お皿の内側の上端から指幅3本ほど上。太ももの内側にふくらむ筋肉(内側広筋)の上です。
やり方:親指の腹を当て、体重をわずかに預けるように押します。
実数:5秒→5秒→5秒 ×5回(左右)/1日1〜2回(入浴後)。
⑤ 歩き始め・朝のこわばりに/足三里(あしさんり・ST36)
位置:膝のお皿の外側下にあるくぼみ(外膝眼=犢鼻)から指幅4本ほど下、すねの骨(脛骨)のすぐ外側です。
やり方:親指を当て垂直に押します。脚全体の力を底上げする目的で古くから用いられてきた経穴です。
実数:5秒→5秒→5秒 ×5回(左右)/1日1回(起床後・歩き始める前に)。
一覧表:位置・秒数・回数・頻度
| 経穴(読み) | 場面 | 位置 | 押し方の実数 | 1日の頻度 |
|---|---|---|---|---|
| 環跳(かんちょう/GB30) | 長く座ったあと立ち上がる前に | 大転子と仙骨裂孔を結ぶ線を3等分した大転子側1/3の点 | 5秒押す→5秒保つ→5秒戻す ×5回 | 1〜2回 |
| 居髎(きょりょう/GB29) | 歩き出す前に・靴下を履くときに | 上前腸骨棘と大転子を結ぶ線の中点 | 5秒→5秒→5秒 ×5回(左右) | 1〜2回 |
| 衝門(しょうもん/SP12) | 脚を組む・車の乗り降り前に | 鼠径溝中央、大腿動脈拍動部のすぐ外側 | 3秒→3秒→3秒 ×3回(左右・軽い力) | 1回 |
| 血海(けっかい/SP10) | 入浴後、付け根〜太ももの冷えに | お皿の内側上端から指幅3本上 | 5秒→5秒→5秒 ×5回(左右) | 1〜2回 |
| 足三里(あしさんり/ST36) | 歩き始め・朝のこわばりに | 外膝眼(犢鼻)から指幅4本下、すねの骨の外側 | 5秒→5秒→5秒 ×5回(左右) | 1回(起床後) |
押してはいけない場面と中止基準
ツボ押しは低リスクな方法ですが、股関節はもともと痛みの原因が幅広い部位です。次に当てはまる場合は、ツボ押しを始める前に医療機関の受診を優先してください。
押してはいけない場面
- 変形性股関節症で人工関節(THA)の手術を受けたあと——手術した股関節そのものや傷あと・インプラント周囲は自己判断で強く押さず、担当の整形外科医・理学療法士に確認してから行ってください。特に環跳・居髎は手術部位に近い位置にあります
- 安静にしていても、特に夜間に強く痛むとき——ツボ押しで様子をみるのではなく、先に整形外科を受診してください
- 発熱を伴う股関節の痛み——化膿性股関節炎など感染症の可能性があるため、押さずにすぐ受診してください
- 転倒・打撲などの外傷直後——骨折(特に高齢の方の大腿骨近位部骨折)の可能性が否定できるまでは、押して確認する・体重をかけて確かめることは避けてください
- 発熱しているとき・体調不良のとき、食後すぐ・飲酒後
- 妊娠中の方——衝門・居髎は下腹部・鼠径部に近いため、自己判断で強く刺激せず、事前に鍼灸師・主治医にご相談ください
- 血をさらさらにする薬を服用中の方——衝門は動脈のすぐそばのため、特に注意してください
すぐに中止する基準
- 押している最中・あとに脚に向かってしびれや電気が走る感覚が出た(環跳で起こりやすい)
- 押したあと痛みが前より強くなった、翌日まで残った
- 押した部位が熱をもった・腫れが増した
- 股関節が引っかかる・外れそうな不安定感が出た
中止基準に当てはまった場合、様子をみるのではなく整形外科の受診をご検討ください。
当院で股関節の痛みの方に伺って多い場面
当院に股関節・脚の付け根の痛みでご来院される方にお話を伺うと、痛みが出るきっかけとして「椅子や車から立ち上がる瞬間」「靴下や靴を履くとき」「長く座ったあとの最初の一歩」を挙げられる方が多くいらっしゃいます。一方で、いったん歩き出して動き続けている途中はさほど気にならないという声もよく聞かれます。膝の痛みと同じく、動作そのものより止まっていた姿勢から動き出す瞬間に負担がかかりやすいという点が共通しています。
そのため当院では、痛くなってから押すだけでなく、座り続けたあと・寝ていたあとの「動き出す前」に押しておく使い方をご案内しています。上の一覧表に場面のラベルを付けているのはこのためです。
研究で報告されていること
ここで紹介する研究は、鍼灸師が鍼(はり)を用いて行った臨床試験を対象としたもので、ご自身で指で押す「指圧(ツボ押し)」そのものを対象にした研究ではありません。また股関節痛を対象にした研究の数は膝痛に比べて少なく、正直にお伝えするとエビデンスはまだ厚くありません。
変形性股関節症を対象にした鍼治療のランダム化比較試験6件・413人を解析した報告です。うち盲検化された2試験・120人で本物に似せた「偽の鍼」と比較したところ、痛みの差は100点満点でおよそ2点にとどまり、「おそらく痛み・機能ともほとんど効果に差がない」と結論づけられています。一方、通常の医師のケアに鍼を追加した1試験では改善が報告されましたが、盲検化されておらずエビデンスの質は低いと評価されました。重篤な有害事象の報告はありません。(Manheimer E, et al. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2018;5:CD013010. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29729027/)
膝または股関節の変形性関節症による慢性痛のある方を、「通常の医師のケアのみ」と「通常のケア+鍼(3か月で最大15回)」に分けて比較した試験です。3か月時点でWOMACスコア(痛み・機能の指標)は、鍼を追加した群で17.6点改善したのに対し、通常ケアのみの群では0.9点の改善にとどまりました(P<0.001)。ただしこの試験は治療者・患者とも治療内容を知ったうえでの比較(非盲検)のため、上のコクランレビューが指摘する「偽の鍼との比較では差が小さい」という結果とあわせて読む必要があります。(Witt CM, et al. Arthritis & Rheumatism. 2006;54(11):3485-3493. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17075849/)
※上記は一般的な情報として紹介するもので、当院の施術効果を保証・断定するものではありません。感じ方には個人差があります。鍼治療と股関節痛の関係をより詳しく知りたい方は股関節 鍼灸のページもご覧ください。
押しても変わらないとき
2〜4週間続けても変化がない場合、原因が筋肉の緊張だけではない可能性があります。股関節の軟骨のすり減り、骨盤まわりの筋力低下、姿勢のクセが背景にあることも少なくありません。股関節の痛み全体の見分け方は股関節痛の原因と整骨院での対処法に、変形性股関節症については変形性股関節症のページ、場面別のストレッチは股関節ストレッチにまとめています。鍼灸での対応にご興味のある方は鍼灸ページもご覧ください。
よくあるご質問
股関節のツボ、押す位置が合っているか確かめませんか
「押してもピンとこない」「どこを押せばいいか分からない」——位置の確認だけでもご相談ください。福岡市城南区・南区・早良区から多数ご来院。月火木金土日祝 9:00〜12:30 / 15:00〜20:00(水曜定休)。
福岡市城南区樋井川2-1-62 マークス城南1F|西鉄バス「長尾公園前」徒歩1分|駐車場4台
- Manheimer E, Cheng K, Wieland LS, Shen X, Lao L, Guo M, Berman BM. "Acupuncture for hip osteoarthritis." Cochrane Database of Systematic Reviews. 2018;5:CD013010. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29729027/
- Witt CM, Jena S, Brinkhaus B, Liecker B, Wegscheider K, Willich SN. "Acupuncture in patients with osteoarthritis of the knee or hip: a randomized, controlled trial with an additional nonrandomized arm." Arthritis & Rheumatism. 2006;54(11):3485-3493. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17075849/
- WHO Regional Office for the Western Pacific. "WHO Standard Acupuncture Point Locations in the Western Pacific Region." 2008. https://iris.who.int/handle/10665/353407
監修:院長 河野太朗(柔道整復師)/経穴・鍼灸の記述:在籍する国家資格をもつ鍼灸師(はり師・きゅう師)の監修協力
最終更新日:2026年8月13日