緊張型頭痛と片頭痛の見分け方|ストレッチが向くのはどちらか

頭痛のストレッチは、すべての頭痛に向いているわけではありません。まず自分の頭痛のタイプを確認してください。

TYPE A|緊張型頭痛(ストレッチが向く)
頭全体・後頭部が締め付けられる、動いても悪化しない
長時間のデスクワーク・スマホ操作・前傾姿勢による首肩の筋緊張が主な原因です。両側性で「圧迫される」「ハチマキを締められる」ような痛みが多く、光や音への過敏はあまりありません。本ページのストレッチはこのタイプを想定しています。
TYPE B|片頭痛(ストレッチは慎重に)
ドクドクと拍動する、動くと悪化する、吐き気や光・音への過敏がある
片側(または両側)がズキズキ脈打つように痛み、体を動かすと悪化しやすいのが特徴です。吐き気、光・音・においへの過敏を伴うこともあります。発作中にストレッチを行うと痛みが増すことがあるため、無理をせず安静を優先してください。頻繁に繰り返す場合は医療機関での診断をおすすめします。

なぜ首・肩甲骨のストレッチが緊張型頭痛に効くのか

緊張型頭痛には、後頭部から肩甲骨にかけての筋肉が深く関わっています。

筋肉場所頭痛との関わり
後頭下筋群(大後頭直筋・小後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋の4つの小さな筋肉)後頭骨と頸椎1・2番の間過緊張するとすぐ近くを通る大後頭神経が刺激され、後頭部から頭頂にかけての締め付けるような痛みにつながると考えられています
僧帽筋上部首の付け根〜肩の上デスクワークで持続的に収縮し、こめかみ側頭部への関連痛(放散する痛み)を起こすことがあるとされます
肩甲挙筋頸椎横突起〜肩甲骨上角肩をすくめる姿勢の持続で硬くなりやすく、頸部全体の可動域低下を通じて頭痛の悪循環に関与します

このため、後頭下筋群と僧帽筋上部・肩甲挙筋という「首・肩甲骨まわり」の筋緊張を緩め、肩甲骨の可動域を保つことが、緊張型頭痛のセルフケアの土台になります。

場面別4つの手技|筋肉名・実数つき

以下の4手技は「どのタイミングで行うか」を想定して設計しています。一度にすべて行う必要はなく、生活の場面に合わせて取り入れてください。

1 上僧帽筋ストレッチ(首を横に倒す) 【デスクで・頭が重いと感じたら】

対象筋肉:僧帽筋上部(首〜肩の上にある最も広い筋肉)

やり方:椅子に座り背筋を伸ばした状態で、頭をゆっくり右に傾ける(右耳を右肩に近づける)。伸ばしたい側(左)の肩が上がらないよう椅子の座面に手をかけるか、軽く手を添えて固定する。左の首筋〜肩の上部にじわっとした伸びを感じる位置で止める。

保持
20〜30秒
回数
左右各1〜2回
頻度
1日2〜3セット(デスクワーク中の休憩に)
注意
首に痛みやしびれが出たらすぐに止める。首を後ろに倒しながら傾けない
2 肩甲挙筋ストレッチ(首を斜め前に倒す) 【デスクで・肩が上がっていると気づいたら】

対象筋肉:肩甲挙筋(頸椎〜肩甲骨の内上角をつなぐ深部の筋肉)

やり方:椅子に座り、顔を斜め下(脇の下をのぞき込む方向)に向けながら頭を前に倒す。伸ばしたい側の肩を下げたまま、反対の手で頭頂部に軽く手を添えて自重で圧をかける。肩甲骨の内上角あたりに伸びを感じる位置で止める。

保持
20〜30秒
回数
左右各1〜2回
頻度
1日2〜3セット
注意
手で頭を強く引っ張らない。肩を下げた状態をキープする
3 後頭下筋ストレッチ(あご引きポジション) 【帰宅後・寝る前】

対象筋肉:後頭下筋群(大後頭直筋・小後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋)

やり方:仰向けになり、両手の指を後頭骨の下(首の付け根、頭蓋骨が乗り始まる部分)に当てる。指の腹で軽く頭を支えながら、顎を軽く引いて頭が重力でわずかに前屈する状態を保つ。首を動かすのではなく「頭の重さを預ける」感覚で行う。

静止
30秒
セット数
3セット
頻度
1日2回(帰宅後・寝る前)
注意
首を後ろに反らさない。あご引き姿勢を保ったまま行う
4 肩回し(肩関節・肩甲骨の可動域維持) 【1時間に1回・こまめに】

対象筋肉:僧帽筋中部・下部、菱形筋、肩甲骨まわりの筋肉全体

やり方:両肩に指先を軽く添え、肘で大きな円を描くように後ろ回しをする。肩甲骨を寄せる・開くを意識しながら、できるだけ大きく動かす。デスクワークの合間に椅子に座ったままでも行える。

回数
後ろ回し10〜15回×2セット
頻度
1時間に1回程度(こまめに)
注意
痛みのない範囲で行う。無理に大きく回そうとしない

4つの手技 実数まとめ一覧

手技名 対象筋肉 場面 保持・動作 回数 頻度
①上僧帽筋ストレッチ 僧帽筋上部 デスクで 20〜30秒 左右各1〜2回 1日2〜3セット
②肩甲挙筋ストレッチ 肩甲挙筋 デスクで 20〜30秒 左右各1〜2回 1日2〜3セット
③後頭下筋ストレッチ 後頭下筋群 帰宅後・寝る前 30秒 3セット 1日2回
④肩回し 僧帽筋中部・下部/菱形筋 1時間に1回 後ろ回し 10〜15回×2セット 1時間に1回程度

やってはいけないこと・中止基準

⚠️ 頭痛ストレッチでやってはいけない動き
  • 首を後ろに大きく反らす:後頭下筋群がさらに収縮し、かえって緊張が強まることがあります。「反らして気持ちいい」感覚があっても習慣化しないでください。
  • 片頭痛の発作中(拍動する痛みの最中)にストレッチを行う:刺激が痛みを増すことがあります。発作中は安静を優先してください。
  • 急に首を大きく回す・グルグル回転させる:頸椎の関節への衝撃が大きく、炎症や違和感の原因になることがあります。
  • 痛みを感じながら伸ばし続ける:痛みは「これ以上伸びない」サインです。耐えながら続けると筋繊維を傷めます。
  • しびれや麻痺があるのにストレッチを続ける:神経への圧迫サインの可能性があります。
🛑 すぐにストレッチを中止する基準
  • ストレッチ中または直後に頭痛が急に強くなった、または今までにない激しさに変わった
  • ストレッチ中に手・腕・指先にしびれや電気が走る感覚が出た
  • めまい・吐き気・視野のぼやけがストレッチ中や直後に出た
  • 痛みがドクドクと拍動する感覚に変わった(片頭痛への移行の可能性)

上記が出た場合はストレッチを中止し、医療機関の受診をご検討ください。

当院での観察(一次情報)

【当院の現場観察】緊張型頭痛でご来院される方の多くは、後頭部の生え際から首の付け根にかけて特に強い張りが見られ、デスクワークが続いた日の夕方に頭痛が悪化する場面が多いという傾向があります。また、肩を上げたまま長時間作業をしている方ほど、肩甲挙筋周辺の圧痛が強い印象があります。あくまで当院での観察であり、すべての方に当てはまるものではありません。

科学的根拠

📄 頸部の運動療法+姿勢矯正エクササイズのRCT(2018年)

Álvarez-Melcón ACら(2018年)は、緊張型頭痛と診断された大学生152名を対象に、リラクゼーション法(自律訓練法)単独の群と、これに頸椎の運動療法・姿勢矯正エクササイズを組み合わせた群を比較しました。4週間・3ヶ月後の追跡で、両群とも頭痛の頻度・強さ・持続時間が改善しましたが、運動療法を組み合わせた群のほうが頻度・強さの改善幅が有意に大きく(P<0.01、効果量d=0.4)、頸部の運動を加える意義が示されています。
PubMed PMID: 27491303

📄 運動療法単独の効果は限定的とする比較試験(2021年)

Corum Mら(2021年)は、頸部痛を伴う緊張型頭痛の患者45名を「脊椎マニピュレーション+運動」「筋膜リリース+運動」「運動のみ(対照群)」の3群に分け、8回の施術を比較しました。脊椎マニピュレーション群は運動のみの対照群と比べて頭痛頻度・強さ・圧痛閾値のすべてで有意に良好な結果を示しており、運動(ストレッチ)だけを行った群の改善は、手技を組み合わせた群より小さいことが報告されています。ストレッチには一定の効果が期待できる一方、単独でのエビデンスの強さは限定的といえます。
PubMed PMID: 33517104

※ 上記論文は運動療法・ストレッチの補助的効果の根拠として紹介するものです。個人の症状・程度によって効果は異なります。