五十肩 ストレッチ|痛みの時期別4つの手技と回数・動かしてはいけない時期|長丘はりきゅう整骨院
【結論】五十肩のストレッチは、時期によって「やっていいこと」と「やってはいけないこと」がほぼ正反対になります。夜間痛・安静時痛が強い急性期に自己流で強く伸ばすと悪化しやすく、痛みが落ち着く拘縮期からが本格的なストレッチの出番です。本記事では、時期別に安全に行える4つの手技(振り子運動・テーブルスライド・タオルストレッチ・壁のぼり)を回数・秒数つきで解説し、絶対に避けたい「動かしてはいけない時期」の動きもまとめています。まず自分が今どの時期かを確認してから始めてください。
⚠️ ストレッチより先に整形外科への受診を検討してほしいサイン
① 転倒・外傷のあと急に腕が挙がらなくなった(腱板断裂の疑い)
② 発熱・強い腫れ・熱っぽさを伴う(化膿性関節炎など感染の疑い)
③ 夜間痛で毎晩ほとんど眠れない状態が続いている
④ ストレッチを始めてから明らかに痛みが強くなった
上記に当てはまらない一般的な五十肩(肩関節周囲炎)であれば、以下の時期別ストレッチが目安になります。
当院では柔道整復師が現在の時期と可動域を確認したうえで、ご自宅でのストレッチの可否と強度をお伝えしています。自己判断で強く伸ばす前に、迷ったときはご相談ください。
なぜ「時期」でストレッチの正解が変わるのか
五十肩(肩関節周囲炎)は、肩関節を包む「関節包」という袋に炎症・癒着が起き、自然経過の中で急性期(炎症期)→拘縮期(凍結期)→回復期(解凍期)という3つの時期をたどることが古くから知られています(Reeves B, "The Natural History of the Frozen Shoulder Syndrome", Scand J Rheumatol, 1975, PMID: 1198072)。この3段階モデルは現在も肩関節周囲炎を理解する基本の枠組みとして使われています。
重要なのは、時期によって組織の状態がまったく違うという点です。炎症が強い時期に関節包を無理に伸ばすと、炎症がさらに広がってしまいます。逆に、炎症が落ち着いて関節が固まってきた時期に何もしないでいると、癒着が進んで可動域が戻りにくくなります。米国理学療法士協会の臨床実践ガイドライン(Kelley MJ et al., "Shoulder Pain and Mobility Deficits: Adhesive Capsulitis", J Orthop Sports Phys Ther, 2013, PMID: 23636125)でも、肩の組織が刺激にどれくらい敏感になっているか(易刺激性の高い・中等度・低い)の段階に応じて負荷を調整した運動療法を行うことが推奨されています。痛みが強く敏感な段階では強いストレッチは行わない、という本記事の時期別の考え方はこの枠組みに沿ったものです。
①急性期:夜間痛・安静時痛が強く、動かすと鋭い痛みが走る。②拘縮期:夜間痛は落ち着くが関節が固まり「腕が上がらない・後ろに回らない」が前面に出る。③回復期:固さがゆるみ、可動域が少しずつ戻る。月数は目安に過ぎず、痛みの性質と可動域の制限度で今の時期を判断します。
動かしてはいけない時期——急性期・夜間痛が強い時期の注意点
五十肩のストレッチで最も多い失敗は、「痛みが強い急性期に、良かれと思って積極的に動かしてしまう」ことです。この時期は関節包そのものに炎症が起きており、ストレッチで組織を伸ばす行為は炎症を刺激して悪化させるリスクがあります。まずはこの時期にやってはいけないことを確認してください。
急性期に避けてほしい動き・行動
- 腕を肩より高く上げる動作
洗濯物を干す・高い棚に手を伸ばすなど。関節包の前方〜上方が強く引き伸ばされます。 - 腕を後ろに強く引く・外側に大きく開くストレッチ
結帯動作(後ろで手を組む)方向のストレッチは、この時期は特に悪化のきっかけになりやすい動きです。 - 他人に強く引っ張って伸ばしてもらう
家族やパートナーに「グイッと」伸ばしてもらう行為は、力加減の調整ができず組織を痛める危険があります。 - 痛みを我慢してストレッチを継続する
「痛いけど続ければ良くなる」という考え方はこの時期は誤りです。痛みは組織への負担のサインです。 - 患側の腕で重い荷物を持つ・引き上げる
買い物袋程度の重さでも夜間痛の悪化につながることがあります。 - 患側を下にして眠る
体重で関節が圧迫され、夜間痛が強くなる代表的な原因です。 - 「温めて動かせばほぐれる」と思って長湯・カイロで温めながら動かす
急性期の強い加温は血管を拡張させ、炎症・夜間痛を翌朝にかえって強めることがあります。シャワー程度にとどめてください。
⚠️ 急性期でも「まったく動かさない」ことも推奨されません。次章の①振り子運動のように、力を完全に抜いて重力に任せる程度の動きは、関節が完全に固まってしまうのを防ぐ目的で行われることがあります。強い痛みを我慢してまで行う必要はありません。
時期別・安全に行える4つの手技
ここからは、拘縮期以降を中心に、時期に応じて行える代表的な4つの手技を紹介します。どの手技も「じわっと伸びる」範囲で行い、鋭い痛みが出たらすぐに中止してください。
対象:肩関節包全体(力を抜いた状態で行う、関節を完全に固まらせないための運動)
やり方:机や椅子の背に健側の手をついて上体を前に倒します(腰の角度45〜60度程度)。患側の腕は力を完全に抜いてだらんと垂らし、体をゆっくり揺らすことで腕を前後・左右・円を描くように自然に動かします。腕の筋肉を使って自分で振り回さないことがポイントです。
- 回数
- 各方向10回
- 頻度
- 1日2〜3回
- 時期
- 急性期でも比較的行いやすい。拘縮期の準備運動としても
- 注意
- 腕に力を入れて振ると逆効果。鋭い痛みが出たら即中止
対象:肩関節前方挙上の可動域(僧帽筋の代償を使わずに腕を前方へ上げる練習)
やり方:テーブルの上に薄いタオルを敷き、患側の手のひらを乗せます。肩をすくめないよう意識しながら、机の上を拭くようにゆっくり手を前方へ滑らせていきます。痛みの出ない範囲まで滑らせたら3秒ほど止め、ゆっくり手前に戻します。摩擦が少ない台の上で行うことで、腕の重さを支えずに前方挙上の練習ができます。
- 回数
- 10回(滑らせた先で3秒静止)
- 頻度
- 1日2セット
- 時期
- 夜間痛が落ち着いてきた拘縮期から
- 注意
- 肩が耳に近づく(すくめる)代償動作が出たら、そこが今日の限界点
対象:肩甲下筋・大円筋まわり(後ろで手を組む「結帯動作」の可動域)
やり方:バスタオルを縦に持ち、健側の手で上から、患側の手で下から背中側に回して持ちます。健側の手でゆっくり上に引き、患側の手が背中を上がっていく感覚を出します。じわっとした伸び感のところで数秒止め、ゆっくり戻します。
- 保持
- 10秒
- 回数
- 5回
- 頻度
- 1日2セット
- 時期
- 夜間痛がほぼない拘縮期以降。急性期は避ける
- 注意
- 鋭い痛みが出たら引く力を弱める。手で強く引っ張り上げない
対象:肩関節前方挙上・側方挙上の最終可動域
やり方:壁の正面(または横)に立ち、患側の指先を壁につけ、指を交互に使いながらゆっくり壁を這い上がるように腕を上げていきます。痛みの出ない最高点で2〜3秒止め、ゆっくり下ろします。前回より少し高い位置を目指しますが、無理に一気に高くしようとしないでください。
- 回数
- 10回(最高点で2〜3秒キープ)
- 頻度
- 1日2セット
- 時期
- 強い痛みが引き、可動域が広がり始めた時期から
- 注意
- 肩をすくめて無理に高さを稼ごうとする代償動作は避ける
4つの手技 一覧表
| 手技 | 対象 | 秒数・回数 | 頻度 | やってよい時期 |
|---|---|---|---|---|
| ①振り子運動 | 肩関節包全体 | 各方向10回 | 1日2〜3回 | 急性期〜拘縮期 |
| ②テーブルスライド | 前方挙上の可動域 | 10回(先端で3秒静止) | 1日2セット | 拘縮期から |
| ③タオルストレッチ | 結帯動作の可動域 | 10秒×5回 | 1日2セット | 拘縮期〜回復期 |
| ④壁のぼり | 前方・側方挙上の最終可動域 | 10回(2〜3秒キープ) | 1日2セット | 回復期に近づいたら |
中止基準——こうなったらすぐ止める
どの時期のどの手技であっても、次のサインが出たらその場でストレッチを中止してください。
- ストレッチ中に電気が走るような鋭い痛みが出た
- 指先や腕にしびれが出た
- その日のうちに腫れ・熱感が強くなった
- 翌日、前日よりも明らかに痛みが強くなっている(強度・回数を減らす)
当院に来院される五十肩の患者様の中には、夜間痛が強い急性期にインターネットで見たストレッチを自己流で行い、翌朝に痛みが悪化してから来院されるケースが一定数見られます。一方で、時期に合った軽めの運動を無理なく続けていた方は、拘縮期以降の可動域の戻りがスムーズな印象があります。「頑張って強く伸ばす」よりも「今の時期に合った強さで続ける」ことが大切です。
よくある質問(FAQ)
五十肩の原因・整骨院での施術内容(手技・鍼治療)・保険適用については、こちらの詳しい解説ページをご覧ください。
五十肩の原因と整骨院での対応を詳しく見る →五十肩のストレッチ、自己流で悪化させる前にご相談ください
「今の自分がどの時期か分からない」「ストレッチをしたら痛みが増した」——そんな方もまずご相談ください。時期と可動域を確認してから、安全にできる自宅ケアをご案内します。福岡市城南区・南区・早良区から多数ご来院。月火木金土日祝 9:00〜12:30 / 15:00〜20:00(水曜定休)。
福岡市城南区樋井川2-1-62 マークス城南1F|西鉄バス「長尾公園前」徒歩1分|駐車場4台
- Reeves B. "The Natural History of the Frozen Shoulder Syndrome." Scandinavian Journal of Rheumatology, 1975; 4(4): 193–196. PMID: 1198072(自己検算:タイトル・著者Reeves B・誌名一致確認済み/eutils esummary照合/retraction表示なし)
- Kelley MJ, Shaffer MA, Kuhn JE, et al. "Shoulder Pain and Mobility Deficits: Adhesive Capsulitis. Clinical Practice Guidelines Linked to the International Classification of Functioning, Disability and Health From the Orthopaedic Section of the American Physical Therapy Association." Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 2013; 43(5): A1–A31. PMID: 23636125(自己検算:タイトル・著者Kelley MJ・誌名一致確認済み/eutils esummary照合/retraction表示なし)
監修:院長 河野太朗(柔道整復師)/鍼灸に関する記述は在籍の鍼灸師(はり師・きゅう師)の監修協力によります。
最終更新日:2026年8月13日