耳鳴り ツボ|キーン・ジーに使う5つの経穴と押し方・受診すべきサイン|長丘はりきゅう整骨院
以下のうち1つでも当てはまる場合は、ツボを押す前にただちに救急車(119)を呼んでください。脳梗塞・脳出血・脳幹梗塞は発症から数時間以内の治療開始が予後を大きく左右します。
- ろれつが回らない・言葉が出てこない・呂律がおかしい
- 物が二重に見える(複視)・片方の目が見えにくい
- 手足の麻痺・片側のしびれ・力が入らない
- 今までに経験したことのない激しい頭痛(突然の雷鳴様頭痛)
- 立っていられないほど激しいめまいを伴う・意識が遠のく
- 突然の耳鳴りと同時に片耳が聞こえにくくなった・耳が詰まった感じがする——突発性難聴の可能性
- 脈を打つようにドクドク・トクトクと聞こえる耳鳴り(拍動性耳鳴り)が片側だけに続く——血管が関係している可能性
- 耳鳴りと同時に、まっすぐ立てないほどのめまいがある
突発性難聴は発症から48時間以内の治療開始が聴力回復の分かれ目とされています。「様子を見る」「ツボ押しで対処する」ことは避け、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。片側だけの拍動性耳鳴りは耳鼻咽喉科(場合により脳神経外科と連携)での画像検査が必要になることがあります。
上記のような緊急サインが見当たらず、慢性的な「キーン」という高音・「ジー」「ブーン」という低音でお困りの方に向けたセルフケア情報です。耳鳴りに古くから使われてきた5つの経穴について、位置の探し方・押し方・秒数・回数・頻度を具体的な数字で紹介します。
ここで紹介するツボ押しは診断や治療の代わりになるものではなく、緊急性がないことを確認したうえで試す補助的なセルフケアです。2週間ほど毎日続けても変わらない、あるいは悪化するようであれば、耳鼻咽喉科・整骨院・鍼灸院へのご相談をお勧めします。
耳鳴りのツボ押しは、耳まわりの3穴(翳風・聴会・風池=1回3〜5秒)と手足の2穴(中渚・太渓=1回5〜8秒)の計5つを、各5回・1日2〜3回(太渓は1〜2回)の範囲で行います。突然の耳鳴りと同時に片耳が聞こえにくい場合は、発症から48時間以内の耳鼻咽喉科受診が聴力回復の分かれ目とされています。
Huangらのシステマティックレビュー・メタ解析(Acupunct Med, 2021)では、鍼治療群と対照群を比較した結果、主要評価指標のVASスコアには有意差が認められませんでした。一方、副次評価指標である耳鳴苦痛度(THI)・耳鳴重症度(TSI)スコアには改善が見られています。ただし著者らは「対象試験の質が低く、症例数も少ないため、確定的な結論を導くには証拠が不十分」と結論づけています(PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32772848/)。
また、Xuらによる既存レビューの総覧(Front Neurol, 2022)では、14件のシステマティックレビュー・メタ解析を評価した結果、方法論の質は全体的に低く(AMSTAR-2でほとんどが「非常に低い」評価)、GRADE評価でも「高品質のエビデンスは1件もない」とされています(PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36468042/)。耳鳴りに対する鍼やツボ押しは、あくまで東洋医学の伝統に基づく手法であり、科学的に確立された高品質の裏付けはまだ十分でないという前提でお読みください。
| 研究名 | 対象人数 | 結果(限界含む) |
|---|---|---|
| 鍼治療のシステマティックレビュー・メタ解析(Huangら、Acupunct Med、2021年) | ランダム化比較試験のメタ解析(論文内で「症例数も少ない」と明記) | 主要評価指標のVASスコアには有意差なし。副次評価指標の耳鳴苦痛度(THI)・耳鳴重症度(TSI)スコアには改善。著者らは「対象試験の質が低く、確定的な結論を導くには証拠が不十分」と結論。 |
| 既存レビューの総覧(Xuら、Front Neurol、2022年) | 14件のシステマティックレビュー・メタ解析を評価 | 方法論の質は全体的に低く(AMSTAR-2でほとんどが「非常に低い」評価)、GRADE評価でも「高品質のエビデンスは1件もない」とされた。 |
耳鳴りの「キーン型」と「ジー型」はどう違うのですか?
耳鳴りは音の高さで大きく「キーン型(高音)」と「ジー型・ブーン型(低音)」に分けて語られることがあります。どちらのタイプかによって、意識しておきたいポイントが変わります。
「キーン」型——セミの声のような高音が続くタイプ
- 「キーン」「ピー」といった金属音・電子音のような高い音
- 静かな場所・夜間に気になりやすい
- 加齢に伴う聞こえの変化・長年の疲労と併せて感じる方が多い
- 片側だけに急に強く出た場合は、後述の突発性難聴のサインに当てはまらないか確認してください
「ジー」「ブーン」型——低く連続する音のタイプ
- 「ジー」「ブーン」「ゴー」といった低くこもったような音
- ストレス・寝不足・肩や首のこりが強い時期に増強しやすい
- 脈と同期してドクドクと聞こえる場合は「拍動性耳鳴り」と呼ばれ、後述の受診サインに該当します
どちらのタイプでも、まず前述の緊急ボックスに当てはまらないかを確認したうえで、以下のツボをお試しください。
耳鳴りに使う5つの経穴はどこにあり、押し方・実数はどのくらいですか?
共通して使える耳まわりの3つのツボ(翳風・聴会・風池)と、タイプ別に使い分ける2つのツボ(中渚・太渓)を紹介します。
耳鳴りのツボとしてまず覚えておきたいのが翳風です。三焦経に属し、耳のすぐ裏を通ることから、耳まわりの血のめぐりに働きかける経穴として古くから選ばれてきました。骨のキワに指の腹を沿わせるように当て、じんわりとした重みを感じる強さで押します。
- 姿勢を正して座り、左右の翳風にそれぞれ人差し指の腹を当てる。
- 顎をわずかに引きながら、骨のキワに向かって指先を沈めるように押していく。
- ズーンと響くような重だるさを感じたところで、その強さをキープする。
- 力を抜いてゆっくり指を離す。
聴会は「胆経」に属し、耳の直前にあることから東洋医学では耳鳴り・難聴・耳の詰まり感に伝統的に用いられてきたツボです。翳風(耳の後ろ)と対にして、耳を前後から挟むように使われることが多い経穴です。人差し指の腹を軽く口を開けた状態で押します。
- 口を軽く開け、人差し指の腹を左右の聴会に当てる。
- 耳の穴に向かってやさしく、垂直方向に押す。
- 「耳の奥に響くような感覚」が出る強さを目安にする。
- ゆっくり離し、口を閉じる。
胆経に属する風池は、首や後頭部のこりが引き金になっている耳鳴りに向くツボです。後頭骨の際に親指を引っかけ、頭の中心に向かって圧をかけます。
- 椅子に腰かけ、両手のひらで頭を包むように後頭部へ回す。
- 親指の腹を風池に当て、斜め上・頭の中心方向へじわじわと圧を加える。
- 首の後ろから頭皮にかけて熱がこもるような感覚が出たら、数秒そのまま静止する。
- 息を吐きながらゆっくり指を離す。
中渚は「三焦経」に属し、耳とつながりが深いとされる経絡の要穴です。東洋医学では、ストレスやイライラを伴って急に強く出る「ジー型・ブーン型」の耳鳴りに用いられてきました。反対の親指の先で骨と骨の間に押し込むように刺激します。
- 片方の手を軽く握り、反対の親指を薬指と小指の骨の間に当てる。
- 骨の間の溝に沿って、手首側に向かってやや強めに押す。
- 「じんとした響き」が指先まで広がる強さを目安にする。
- ゆっくり離す。反対側も同様に行う。
太渓は「腎経」の要穴で、東洋医学では「腎は耳に開竅する(耳は腎の状態を反映する)」という考え方があり、加齢や疲労の蓄積に伴って慢性的に続く「キーン型」の耳鳴りに用いられてきました。足を組んで座り、反対の親指の腹でくぼみに向かって押します。
- 椅子に座り、片足をもう一方の膝の上に乗せる。
- 反対の親指の腹を内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみに当てる。
- 骨に向かってゆっくり垂直に押す。
- 「じんわり温かくなる」感覚を目安に、ゆっくり離す。反対側も同様に行う。
当院に耳鳴りを主訴に来院される方の多くは、同時に首や肩のこりを訴えられる傾向があります。あくまで当院での現場の傾向であり、すべての耳鳴りに首こりが関わっているわけではありません。
耳鳴りのツボ・5つの経穴を一覧表で確認できますか?
ここまで紹介した5つのツボの位置・押し方の実数を一覧にまとめました。
| 経穴名 | 位置 | 1回の秒数 | 回数 | 1日の頻度 | 向くタイプ |
|---|---|---|---|---|---|
| 翳風(えいふう) | 耳たぶの後ろのくぼみ | 3〜5秒 | 5回 | 2〜3回 | 共通 |
| 聴会(ちょうえ) | 耳の穴の前・口を開けたくぼみ | 3〜5秒 | 5回 | 2〜3回 | 共通 |
| 風池(ふうち) | 後頭部の付け根のくぼみ | 3〜5秒 | 5回 | 2〜3回 | 共通・首こり型 |
| 中渚(ちゅうしょ) | 手の甲・薬指と小指の骨の間 | 5〜8秒 | 5回 | 2〜3回 | ジー型(ストレス性) |
| 太渓(たいけい) | 内くるぶしとアキレス腱の間 | 5〜8秒 | 5回 | 1〜2回 | キーン型(加齢・疲労性) |
耳鳴りのツボ押しでやってはいけないこと・中止基準と注意点は何ですか?
- ツボを押した直後に耳鳴りが激しくなった・めまいが出た 刺激が体に合っていなかった可能性があります。その日はいったん中止し、次に行うときは力を弱めてみてください。同じ反応が繰り返される場合は、整骨院・鍼灸院で刺激量について相談してください。
- 「ろれつが回らない」「手が動かない」など脳卒中サインが出た ツボを押すことを直ちに中止し、救急(119番)を呼んでください。
- 2週間以上毎日続けても症状が変わらない・悪化している 耳鳴りの原因の精査が必要です。耳鼻咽喉科・整骨院・鍼灸院を受診してください。
やってはいけない動作・注意点
- 耳の穴に指を入れて押す・綿棒などを使って強く刺激する 外耳道や鼓膜を傷つける危険があります。ツボは耳の周囲の皮膚の上から指の腹で押してください。
- 「効かせよう」として痛みを我慢しながら強く押す 目安になるのは、じんわりとした心地よい重み・響きです。強い痛みを我慢して押すと神経・血管を傷めるリスクがあります。
- 耳だれ・耳の痛み・皮膚の炎症がある時に押す 外耳炎・中耳炎などの急性の炎症がある部位は避け、先に耳鼻咽喉科を受診してください。
- 運転や高所での作業の直前にツボ押しを行う 刺激の後に眠気やぼんやりとした感覚が残ることがあります。集中力が必要な作業の前は控えてください。
- 自己判断で合谷や三陰交など妊娠中に避けるべきとされるツボまで刺激してしまう 本ページで紹介した翳風・聴会・風池・中渚・太渓の5穴は、その禁忌リストには通常含まれません。それでも妊娠中は体の感受性が変わりやすいため、使用する前には必ず産婦人科の主治医、または当院に在籍する国家資格をもつ鍼灸師(はり師・きゅう師)にご相談ください。
耳鳴りが起こる仕組みや、加齢性・ストレス性の違い、首こりとの関わり、突発性難聴との見分け方を詳しく知りたい方は、当院の解説ページもあわせてご覧ください。
耳鳴りの原因と整骨院・鍼灸での対応を詳しく見る →2週間以上毎日続けても改善しない、あるいは悪化する場合は、耳鼻咽喉科・整骨院・鍼灸院への相談をお勧めします。突発性難聴や脳卒中を疑うサインがある場合は、ツボ押しより受診を優先してください。
1. Huang K, Liang S, Chen L, Grellet A. "Acupuncture for tinnitus: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials." Acupunct Med. 2021;39(4):264-271.
PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32772848/(タイトル・筆頭著者 Kai Huang の一致を確認。撤回(Retraction)・懸念表明(Expression of Concern)の発表なし。論文内の「証拠は確定的な結論を導くには不十分」という記載を、このページでも同様に反映。)
2. Xu X, Xie H, Liu Z, Guo T, Zhang Y. "Effects of acupuncture on the outcome of tinnitus: An overview of systematic reviews." Front Neurol. 2022;13:1061431.
PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36468042/(タイトル・筆頭著者 Xin Xu の一致を確認。撤回(Retraction)・懸念表明(Expression of Concern)の発表なし。既存レビュー14件の方法論的質は「全体的に低い」、GRADE評価で「高品質のエビデンスなし」という論文内の記載を、このページでも同様に反映。)
最終更新日:2026年9月7日